なぜシネマグラフを見ているとノスタルジックな気持ちになるのか

何も考えずにシネマグラフを見ていると、ノスタルジックな気持ちになることが多い。
友人に聞いてみたところ、共感してもらえたので、
これは自分だけの特殊な現象ではないようです。

そこで本稿ではこの現象について考察してみました。

シネマグラフとは

wikipediaではシネマグラフが以下のように記述されています。

Cinemagraph - Wikipedia, the free encyclopedia

Cinemagraphs are still photographs in which a minor and repeated movement occurs. Cinemagraphs, which are usually published in an animated GIF format, can give the illusion that the viewer is watching a video.

 

They are commonly produced by taking a series of photographs or a video recording, and, using image editing software, compositing the photographs or the video frames into a seamless loop of sequential frames. This is done such that motion in part of the subject between exposures (for example, a person's dangling leg) is perceived as a repeating or continued motion, in contrast with the stillness of the rest of the image.

 

The term "cinemagraph" was coined by U.S. photographers Kevin Burg and Jamie Beck, who used the technique to animate their fashion and news photographs beginning in early 2011.[1][2][3]

 

cinemagraphとは2011年からKevin BurgとJamie Beckによって使われ始めた言葉で、
画像ではあるものの、動画のように錯覚してしまうメディア。

静止画の中で、一部の小さな箇所だけが動いて、ループするものが主流であります。

例えば、このようなものです。

Waving reeds cinemagraphCC BY 2.0view terms

Johan Blomström - http://www.flickr.com/photos/blomstroem/5706739113/

f:id:yusuke_ujitoko:20140829022820g:plain

 

他にも、

映像でも写真でもない不思議でおしゃれなgifアニメ「Cinemagraph」 - NAVER まとめ

Cinemagraphs

などのサイトでまとめて鑑賞することができます。

どうでしょう。
いろいろと眺めていると、どこか懐かしい気持ちが生まれてきませんか?

 

このシネマグラフ、スマホアプリなどで非常に簡単に作成することができます。
もし興味のある方はぜひ試してみてください。

それでは本題に入ります。

なぜノスタルジックな気持ちになるのか

主に考えられる要因は2つ。

  1. シネマグラフに用いられる素材に、そういう(郷愁を誘う)性質のものが多い
  2. シネマグラフの構造に原因がある

1.の場合は、なぜそういう性質のものが選ばれるのかを考えなくてはならないのですが、
その原因も2.にあるのではないかと考えられます。
ですので、とりあえず2.を考えることにします。

シネマグラフの構造と記憶の関係

シネマグラフとは、静止画の中で一部のみがループしている画像のことでした。
このループの単位時間は1秒程度のものから長くて3秒程度でしょうか。

特徴を切り出すと、

  • 静止している部分と、動いている部分がある
  • 動いている部分は短いループになっている

の2点になります。
これらの特徴はヒトの記憶と非常に構造が似ているのではないでしょうか。

ヒトの記憶は、大抵の場合、ある出来事に注目したカタマリになっています。
その出来事が中心になっているため、その周りの環境までは注意が払われておらず、
記憶が想起される場合には、出来事のみ動いていて、周囲はぼけて静止している(もしくはよくわからない)状態ではないでしょうか。

さらに、記憶は、時間が経てばたつほど、少なくなり、細切れになっていき、イベント性の強いものが残るという特徴もあります。
つまり想起される昔の記憶は、

  • ある出来事に注目した、
  • 短い時間のループ構造

になっているのではないでしょうか。
シネマグラ
フと記憶の構造的な類似性があるのが見て取れます。

この類似性があるせいで、シネマグラフをぼーっと見ていると、
無意識のうちに、自分の中の記憶を探っているのと同じ状態になり、
「懐かしさ」のようなものも生まれる…のでは。

以上が仮説です。

 

そうなると、この構造的な類似性を生かして、シネマグラフを使ったコンテンツが作れるはずです。

シネマグラフを利用したコンテンツ

例えば、どの家庭にもある家族写真。
その写真には思い出がたくさん詰まっているのですが、当然のことながら動きません。
ある瞬間を切り取った情報です。

ところが、その写真に写っている人の目や、周りの景色の一部だけをループするように加工するだけで、

その場面の想起がより活発にされて、見ただけで「懐かしい」「実際にあった」と感じやすいものになる気がします。

(追記:)探してみると、結構ありますね

 

Party Boat Cinemagraph
Party Boat Cinemagraph by simdragon90 on deviantART

 

 

http://www.family-studio.ro/wp-content/uploads/2014/05/cinemagraf-family-studio-fotograf-brasov.gif

http://www.family-studio.ro/wp-content/uploads/2014/05/cinemagraf-family-studio-fotograf-brasov.gif

記念写真が単なる情報から、生々しい記憶に近づくのではないでしょうか。

こんなシネマグラフが、家庭に普通に飾ってあったら面白いですね。

 

他にも、シネマグラフの特徴を生かした三次元のコンテンツも作れます。
三次元空間で一部だけがループしている場面・・・

実際の人の生活空間は三次元なので、本当は三次元のコンテンツの方が記憶との干渉は、しやすいはずですね。

 

シネマグラフの利用価値はまだまだあると思います。